製造業のサプライチェーン脱炭素を加速!物流・原材料の排出量削減、具体的ステップ

サプライチェーン脱炭素製造業Scope3排出量削減物流原材料調達GX
製造業のサプライチェーン脱炭素を加速!物流・原材料の排出量削減、具体的ステップ

世界中で気候変動問題への意識が高まる中、日本の製造業においても「脱炭素化」は喫緊の経営課題となっています。特に、自社だけでなくサプライチェーン全体で排出される温室効果ガス(GHG)であるScope3排出量の削減は、企業の競争力やブランドイメージを左右する重要な要素です。

しかし、「どこから手をつければ良いのか」「具体的に何をすれば良いのか」と悩む企業も少なくありません。本記事では、製造業が直面するサプライチェーン脱炭素化の課題に焦点を当て、特に物流原材料調達という主要な排出源に対して、実務に活かせる具体的な削減策を詳しく解説します。持続可能な未来への一歩を踏み出すためのヒントとして、ぜひご活用ください。

サプライチェーン脱炭素化の現状と製造業の課題

多くの製造業において、自社の事業活動から直接排出されるScope1およびScope2の排出量よりも、サプライチェーン全体で発生するScope3排出量が圧倒的に大きな割合を占めると言われています。例えば、ある大手電機メーカーでは、Scope3排出量が全体の90%以上を占めると公表しています。これは、原材料の生産、製品の輸送、使用済み製品の廃棄など、自社が直接関与しない部分での排出量が極めて大きいことを示しています。

国際的な投資家や金融機関は、企業のGHG排出量削減目標、特にScope3への取り組みを投資判断の重要な指標としています。また、取引先からの脱炭素要請も年々厳しくなっており、これに対応できない企業はビジネス機会を失う可能性も出てきています。サプライチェーン全体の排出量可視化と具体的な削減計画の策定は、もはや企業の存続と成長に不可欠なグリーントランスフォーメーション(GX)戦略の一部と言えるでしょう。

物流におけるサプライチェーン排出量削減の具体的アプローチ

製品の輸送は、製造業における主要な排出源の一つです。ここでは、物流過程でのGHG排出量を削減するための具体的な施策をご紹介します。

  • 輸送効率の改善と最適化
    • モーダルシフトの推進:トラック輸送から、CO2排出量が大幅に少ない鉄道や船舶への切り替えを検討しましょう。例えば、鉄道輸送はトラック輸送に比べてCO2排出量を約1/10に削減できると言われています。長距離輸送や大量輸送において特に効果的です。
    • 積載率の向上:輸送車両やコンテナの積載率を最大化することで、輸送回数を減らし、それに伴う排出量を削減できます。AIを活用した積載最適化システムや、複数の荷主による共同配送なども有効な手段です。
    • 配送ルートの最適化:最新の交通情報や地理情報システム(GIS)を活用し、最短・最効率の配送ルートを選定することで、走行距離と燃料消費量を削減します。
  • 低炭素・ゼロエミッション輸送手段への転換
    • EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の導入:配送トラックやフォークリフトなどを電動化することで、走行時のGHG排出量をゼロにできます。初期投資は高額ですが、燃料費削減や補助金活用により、長期的なメリットが期待できます。
    • バイオ燃料・SAF(持続可能な航空燃料)の活用:既存の輸送手段を活かしつつ、化石燃料からバイオ燃料などへの切り替えを進めることで、排出量削減に貢献できます。
  • 物流拠点・倉庫の省エネ化と再生可能エネルギー導入
    • 物流拠点や倉庫の照明をLED化したり、高効率な空調設備を導入したりすることで、電力消費量を削減します。さらに、屋根に太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギーを自家消費することで、電力由来の排出量を大幅に削減することが可能です。

原材料調達におけるサプライチェーン排出量削減の具体的アプローチ

製品の製造に不可欠な原材料の調達段階も、大きなScope3排出源となります。ここでは、原材料調達における脱炭素化戦略を見ていきましょう。

  • サプライヤーとの協調による排出量データ開示と削減目標設定
    • データ収集と可視化:サプライヤーに対し、GHG排出量データの開示を要請し、自社のサプライチェーン排出量全体を正確に把握することが第一歩です。CDPなどの国際的な情報開示プラットフォームを活用する企業も増えています。
    • 削減目標の共有と支援:サプライヤーと協力し、共通の排出量削減目標を設定します。排出量削減のノウハウ提供や技術支援を通じて、サプライヤーの脱炭素化を後押しすることも重要です。例えば、大手自動車メーカーでは、サプライヤー向けに省エネ診断や再生可能エネルギー導入支援プログラムを提供しています。
  • 低炭素原材料・リサイクル材への切り替え
    • 環境負荷の低い素材の採用:製造過程での排出量が少ない低炭素鋼材、リサイクルプラスチック、バイオマス由来の樹脂など、環境負荷の低い原材料への切り替えを積極的に進めます。例えば、一部の電子機器メーカーでは、製品筐体に100%リサイクルプラスチックを使用する取り組みが始まっています。
    • 地産地消・近隣調達の推進:可能な範囲で、調達先を地理的に近いサプライヤーに限定することで、輸送距離を短縮し、物流段階での排出量を削減します。
  • 設計段階からの環境負荷低減
    • LCA(ライフサイクルアセスメント)の導入:製品の企画・設計段階から、原材料調達から廃棄までの全ライフサイクルにおける環境負荷を評価し、排出量の少ない設計を追求します。
    • 軽量化・長寿命化・部品共通化:製品の軽量化は輸送時の燃料消費削減に繋がり、長寿命化は買い替えサイクルを延ばし、製造・廃棄に伴う排出量を抑制します。また、部品の共通化は生産効率を高め、原材料の使用量を最適化します。

サプライチェーン全体での脱炭素推進の鍵は「協調」

サプライチェーン脱炭素化は、一社単独で完結できるものではありません。多くのサプライヤー、物流パートナー、顧客など、多様なステークホルダーとの密接な「協調」が不可欠です。

特に、複雑なサプライチェーンを持つ製造業においては、膨大な数のサプライヤーから排出量データを収集し、それを正確に算定・管理することは容易ではありません。ここで重要となるのが、データ連携のプラットフォームの活用です。共通のプラットフォームを通じて、サプライヤーと排出量データを共有し、削減目標の進捗を可視化することで、サプライチェーン全体の脱炭素化を効率的かつ効果的に推進できます。このようなプラットフォームは、情報共有の透明性を高め、サプライヤーエンゲージメントを強化する上で強力なツールとなります。

まとめ

製造業におけるサプライチェーン脱炭素化は、単なる環境規制への対応ではなく、企業の持続的な成長と競争力強化に直結する重要な経営戦略です。本記事では、主要な排出源である物流と原材料調達に焦点を当て、モーダルシフト、EV導入、低炭素原材料への切り替え、サプライヤーとの協調といった具体的な削減策をご紹介しました。これらの取り組みは、短期的なコスト増に見えるかもしれませんが、長期的には新たなビジネス機会の創出、ブランド価値の向上、そして何よりも地球環境への貢献という形で、企業に大きなリターンをもたらすでしょう。サプライチェーン全体での「協調」を鍵に、GXを力強く推進していくことが、これからの製造業に求められています。

脱炭素サプライチェーンに興味がありますか?

AIを活用した業務自動化で、効率化とコスト削減を実現します。

詳しくはこちら →

あわせて読みたい